五月雨

元官僚

官庁訪問へ向けて(事前準備編)

 「官庁訪問へ向けて」と題したこの記事では官僚(国家総合職事務系)になるための登竜門である官庁訪問の対策について書きます。官庁訪問ではいわゆる、「高度な情報戦」が行われていますが、そんなものは気にせず、あくまで、実力で官庁訪問を乗り切ってほしいとの願いで書いていきたいと思います。この記事は事前準備編と当日編、大きく2つに分けて書いていきます。

 事前準備編(前編)では官庁訪問の事前に行われる説明会やインターンにおける対策ややっておくべきことを、当日編(後編)では官庁訪問の当日に行われる面接の説明や想定質問について書きます。

 私自身、周囲に官僚となる人がいない地方大学から官庁訪問を経て省庁に採用していただきました。周りに志を同じくする人がいないとモチベーション維持の面でかなり辛いです。環境による格差をなるべく解消し、自分のような立場にある人の力になればと思います!!

ニュースや各府省の広報をチェック

 まず、世の中で話題となっているニュースや各省庁に関する前提知識をつけることは非常に重要です。もっとも、採用担当の方が専門知識は必要ないとお話され、政策分野への関心が必要だとお話されています。しかし、それでも世の中の情報に疎いのは困りますし、政策への知識があるに越したことはないです。ここではどのような媒体をどのように読めば良いのか解説します。

新聞、TVなど日々のニュース

 これだけは断言できるのですが、志望省庁以外の分野のニュースも幅広く知っていることは重要です。教育問題は知っているが、それ以外の分野になると一切分からない、という人材は求められていません。どんな省庁でも、また、どんな企業でも、社会人にはフラットな視野と幅広い知識が求められていることはまず間違いないです。そこで、近くの図書館などで新聞に目を通したり、TVのニュースを見たりします。新聞はネットニュースなどと違い、相対的に信頼できる媒体であることは間違いないですし、嫌でも興味、関心のない情報が目に入ってくるのでおすすめです。また、TVのニュースは影響力が大きく、世間がどのようなニュースに注目しているのか知ることができます。

 ここでは私が実践していた方法を紹介します。まず、毎日、日本経済新聞の1~3面の記事をすべて読み、それ以降のページは流し読みします。さらに、時間がある時は、読売新聞や朝日新聞でも似たようなことをやっていました。他にも、自信が興味のあるトピックや論争的な話題(例えば、反撃能力の是非)に関してはそれぞれの社説などを読み比べて意見の違いを認識すると共に、それを踏まえて自分の意見を考えます。そうすることで、時事的な話題に強くなることができますし、仮に官庁訪問である話題に対して意見を求められても、普段から考える癖をつけていればそれなりに対応できます。TVのニュースはご飯などを食べながら話半分で聞き、政策に対する世間の認識や反応を考える際の補助としていました。(例えば、消費税の増税は国民の理解が得にくいし、プライマリーバランスの黒字化の必要性が分かってもらえていないな~というように)

白書などの刊行物

 幅広い知識や公平な視点は重要ですが、それ以外にも、もちろん政策についての知識もあったほうがいいです。自身がやってみたいという分野では白書などの政府刊行物の該当ページ、関連するニュースなどの詳しい解説記事、その道の専門家のTwitterなどを見ておくと良いです。また、各省庁の広報をSNSなどでチェックすると省庁がどのようなメッセージを発信したがっているか見えてきます。これは省庁によって見るものが異なってくるので、少し具体的な話はできなくて申し訳ないです。

 しかし、政策についての知識を得るときに意識していたことはどんな省庁でも共通点があると思うので、実際に私がしていたことを書いておきます。

  1. やってみたい政策について検討する。
  2. なぜその政策をやってみたいのか理由を考える。
  3. その政策の現状を調べる、もう既に行われているのか、まだ、行われていないのか。
  4. もう既に行われているなら足りないところはないか、まだ行われていないなら、なぜ行われていないのか。
  5. それを踏まえてもう一度やってみたい政策について検討する。
  6. 検討した政策について他人に説得的に説明できるようになる。

 これだけのことを自身の関心分野や省庁のホットトピックに対してやっておけば、説明会やインターン、ワークショップの政策の勉強としては十二分かと思われます。私の場合は、実際に官庁訪問をやってみて過剰なくらいでした。しかし、やっておくに越したことは無いですし、過剰であるというのは私が内定を得た観点からの結果論に過ぎません。

各省庁が行っている業務説明会などへの参加

 各省庁が行っている業務説明会へ積極的に参加しましょう。もちろん、説明会への参加は必ずしも内々定の獲得に関係しているとは言えない面が確かにあります。実際に人気省庁(行政学の先生曰く、首相秘書官を出している財務省経産省警察庁、外務省、防衛省のこと?果たしてこの括りにどれほどの価値があるのか不明ですが)でもインターンやワークショップには参加せず、説明会にもほとんど参加せずに内定を取った人を知っています。しかし、説明会に何度も参加することで、採用担当者に熱意を示すことができますし、何より、志望省庁の業務理解に繋がります。省庁がどのような問題意識を持ち、どのような取り組みを行っているのか、端的に知ることができる重要な機会です。上述したように説明会に参加するのも、もちろん大事なのですが、有意義な機会にするためには以下の取り組みが重要です。

説明会参加前:軽く事前学習

 ニュースをチェックして話題に上がっている問題を確認しておいても良いかもしれません。もちろん、「ニュースや各府省の広報をチェック」で書いたことができていれば十分です。官庁訪問前の春頃の説明会に参加する段階ではこの水準にまで持っていきたいところではあります。

説明会参加中:気になったポイントがあれば質問

 これは原課面接の練習になります。ただ、無理して質問を絞り出す必要も無いですし、みんな考えることは同じで、多くの人が質問するために手を挙げるので質問出来ないことも…そういった場合はアンケート(後述)にて疑問を書いてみるのもいいのではないかと思います。また、仮に対面での説明会であった場合、後にまだ、職員の方が残って、質問を受け付けてもらえそうでしたら質問してみても良いかもしれません。

説明会参加後:アンケートとまとめ

アンケートに回答

 説明会の参加後に省庁から配られたアンケートに回答します。この際に私が意識して自由記述欄や感想欄に書いていたことは以下の2つです。

  • その1:気づき、(あるトピックに関する認識が説明会を聞いてどのように変わったか)

⇒例)「説明会を聞くまではロシアのウクライナ侵攻で軍事侵攻を止められない国連の存在意義について懐疑的になっていました。しかし、今回の〇〇さんの国連外交に関する説明をお聴きして、国際社会における規範形成で国連が重要な役割を果たしていることを知り、国連の重要性を改めて認識しました。」

  • その2:疑問点(説明会中に質問しようとしてできなかったことや後から湧いてきた疑問、素朴な関心について)

⇒例)「日本では業界の再編が進まない背景に、法制度や団体規制があると〇〇さんからお聴きしましたが、そのような規範を残している日本の風土や文化の影響もあるのではないかと疑問を持ちました。」

 また、この2つの質問をする際には、説明会の内容を踏まえているということを明示的にすることも重要なのではないかと思います。

 さらに、自由記述欄や感想欄の枠がすべて埋まる分量の「気づき」や「疑問点」をアンケートには書いていました。(私の場合は意識的にやるというより、むしろ、書きたいことを書いた結果、枠が埋まっていました。)他にも、アンケート用紙の下の余白に「本日は説明会を開催していただきありがとうございました。」など感謝の言葉を書くようにしていました。これらの試みは決して本質的なものでないとは思いますが、採用担当だって人間。内容がデタラメではだめですが沢山書かれたコメントに悪い気はしないでしょうし、感謝の言葉は嬉しいはずです。

内容をまとめる

 説明会での資料を印刷して内容について一冊のノートなど紙媒体にまとめておくと、官庁訪問の際に、政策について見返すことができて大変有効だと思います。その際の自身の認識の変化や省庁に対する印象も書いておきましょう。官庁訪問で聞かれる可能性があります。私は実際に聞かれました。(紙ではなくて、もちろん電子機器でまとめてもいいのですが、なんやかんや充電が足りるかとか気になってしまうもの。官庁訪問では余計なことに気を遣わないのが重要です。)私自身は、一切まとめておらず、後から、親切な人に説明会の資料を資料を頂きました。やっておけば良かったことの一つです。

志望省庁以外を見る

 志望省庁以外の省庁も巡ってみると良い出会いがあるかもしれません。「官庁訪問はマッチングの場」という言葉があるかと思いますが、実際に体験すると強く実感します。自分が志望する省庁だからと言って必ずしも自分と相性がいいとは限らないのです。説明会は気軽に参加して、興味や関心を確認したり、知識の幅を広げたりする機会にするべきです。私が官庁訪問で2日目に訪問させていただいた省庁は、偶然、イベントに参加した際に、話が盛り上がって興味を持ちました。

各省庁が行っているインターンシップ、ワークショップなどへの参加

 ここではインターンシップやワークショップにおける立ち回り?なるものを解説します。といっても、これも説明会と同様で「ニュースや各府省の広報をチェック」で述べた対策ができていれば政策の知識面では十分かと思います。

 立ち回りを解説する前に、前提として、この記事の存在自体を否定することを書いてしまっているかもしれませんが、インターンシップやワークショップにおけるグループワークに一朝一夕の対策法は存在しません。普段からゼミ、学生団体、サークルなどで周囲の人と話し合いながら主体的に組織のなかで役割を果たした経験を積んでおくことが一番の対策になると思います。ぜひ、そのような機会を大学1、2年生の間に積んでおいてください。

 ただ、テクニック的なものが無いのかと言われればそんなことは無いので書いていきます。ただ、これは当たり前のことですので、軽く読んでいただいて構いません。逆にこれが当たり前だと思わない人は要注意です。前提として、インターンやワークショップを職員の方からとある政策の説明があった後、関連する政策立案を行うグループワークが課され、その内容をグループで発表し、質疑応答をするものだったと仮定します。おそらく、これが最もオーソドックスな形のはずです。

その1:一歩引いて周囲を見る

 例えば、とある役割(例えば発表者など)を皆がやりたがらなければ自分が率先して行う、逆に皆が自分をアピールしようと思って、役割に立候補して積極的なら自分は一歩引く、というように周囲を見て立ち回ることが重要です。他にも、議論が白熱したときにこそ、喋っていない人がいないか注意し、その人に話を振る、などです。文章で書くと当たり前のことなのですが、グループワークの時間ギリギリになって焦り始めたときにこれを意識できる人は少ないです。こういったものはもちろんテクニックとしてありますが、日頃から話し合う機会があれば、自然とこういう立ち回りができるのではないかと思います。きっと職員の方も見てくれているはずです。

その2:質疑応答を引き受ける

 発表後の質疑応答はその人の実力が一番出ると私は考えています。その際に、上手く受け答えすることができれば高い評価を得ることができるかもしれません。仮に、そのような評価を得られなくても、率先して、皆がやりたがらなかった場合に、役割を引き受ける人に悪い印象を持つ人はいません。また、受け答えで仮に考えた政策の至らない点を指摘された際、職員の方から助言をいただいた際は、自身がどうしてそのような政策を考えたか伝えつつも、しっかりと謝意を示し自分の至らない点を認め、素直に受け入れましょう。そういった振る舞いが出来る人には、これから伸びる、というようなポテンシャルを感じるはずです。

コラム~友人作り~

 この記事は周囲に官僚を目指す人がいない環境から官僚を目指す人に向けて書いたものですが、周囲に官僚を志す友人はいた方がいいに決まっています。インターンシップやワークショップで仲良くなった人と官庁訪問の模擬面接などを行って対策するのがなんやかんや有効です。今ではオンライン会議システムを用いて、場所が遠くても一緒に対策ができるいい時代だと思います。せっかくなので有効活用していきましょう!!

 

 最後まで記事を読んでくださり本当にありがとうございます。この記事が読者の方の力になれば幸いです。後に後編である「官庁訪問へ向けて(当日編)」も書きますので読んでいただければ嬉しいです。

 また、何か意見、質問、こんな記事を書いてほしい、などありましたら、是非コメントを書き込んでください。全てに返信させていただきます。